芭蕉布を生む
芭蕉布づくりにおいて「織り」は工程の1%
糸芭蕉を育てる畑仕事に始まり、そこから繊維を取り出し、コツコツと糸をつくり、撚りをかけ、絣を結び、染め…長く、美しい過程があります。一つひとつの手仕事の重なりと、作り手たちの心模様が美しい布を生みます。
芭蕉布が生まれる
23の工程
芭蕉布は苧畑
ウーバタケ※1から
1. 芭蕉布づくりは畑仕事から
- 糸芭蕉の栽培
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野生の糸芭蕉は繊維が硬く、喜如嘉では栽培をしています。葉、芯を切り落として繊維を柔らかくする「芯止め」を年に数回行うことで、上質の繊維をとることができます。
2. 葉板 (ようへい) を剥ぎ、4つに分ける
- 苧剥ぎ (ウーハギ)
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糸芭蕉とその繊維を苧 (ウー) と呼びます。切った幹の切口は20数枚の輪層になっていて、中央ほど柔らかい。1枚ずつ剥ぎながら、4種類に分けます。
3. 原皮 (げんぴ) を煮る
- 苧炊き (うーだき)
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大鍋に木灰汁 (もくはいじる) を沸騰させ、縄を底に敷いて、その上に束ねた原皮を重ねて煮ます。木灰汁の加減は長年の勘に頼る、とても難しい仕事です。
4. 水洗い
- 水洗い
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煮た原皮は、束が崩れないように気をつけながら水洗いをし、木灰汁を落とします。重石をし、適度に水を切ります。
5. 不純物を取り除く
- 苧引き (うーびき)
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エービと呼ばれる竹鋏で原皮をしごいて、不純物を取り除きます。柔らかいものは緯糸 (よこいと) に、硬いものや色のついたものは経糸 (たていと) に分けます。苧引きの良し悪しが布の仕上がりに大きく影響します。
6. 竿にかけて干す
- 乾燥
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経糸用、緯糸用に分けた繊維が適度にたまると竿にかけます。干す場所は風が当たらない日陰を選びます。普通、竿の真ん中から右手が経糸用、左手が緯糸用と決められています。
- ※1
- 苧 (ウー) とは糸芭蕉とその繊維のこと。
糸を績む
(うむ ※2)
7. 繊維を巻いて鞠型に
- チング巻き
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苧績みする時に、繊維を長いままで水に浸すのは具合が悪く、繊維を2、3本ずつ巻いて、こぶし大の鞠型にします。色のついたものや硬いものは分けておきます。
8. 繊維を裂いてつなぐ
- 苧績み (うーうみ)
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チングを水に浸し、軽く絞ります。片手に小刀を持ち、用途に応じて太さを決め、繊維を裂き機結び (はたむすび ※3) をします。制作工程の中で最も経験のいる作業です。
9. 緯糸は手で巻く
- 緯管巻き (よこくだまき)
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緯糸の地糸には、撚りをかけず、手巻きします。この巻き方をすると、糸は中から出てくるので、糸が引っ張られず耳がつりません。
10. 糸車を使って丈夫に
- 撚り掛け (よりかけ ※4)
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毛羽立ちを防ぎ、糸を丈夫にするために、撚りを掛けます。霧吹きで湿気を与えながら、経管に巻きとります。撚り加減が織りにひびきます。
11. 長さと本数を決める
- 整経
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撚りを掛ける時に湿らせた糸は、そのまま置いておくと腐ってしまうため、4本建てで回転式の整経台で手早く整経します。
12. 木灰汁で煮る
- 煮綛 (にーがし ※5)
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諸染 (むるずみ) 糸と絣糸 (かすりいと) は、綛 (かせ ※6) にしたまま木灰汁で煮て、糸を柔らかくします。上質の糸ほど煮綛の時間は短くなります。よく水洗いしてからピンと張ります。
- ※2
- 糸の端と端をつなぎ長い糸にすること。
- ※3
- 糸と糸を結ぶときに、片方の糸は折り曲げるだけ、もう片方の糸の結びのみで結びつける方法。結び目が小さく目立たない。
- ※4
- 糸をねじり合わせて強くすること。
- ※5
- 糸を煮て柔らかくすること。
- ※6
- 扱いやすい長さにまとめたもの。
喜如嘉の
色・絣(かすり)
13. 絣柄を引きずらす
- 絣糸の組み合わせ
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綛の両端を竿にかけたまま、整経のたるみを片端に寄せます。経絣は絣柄に合わせてずらし、小綴じ、大綴じをし、寸法通りに柄の組み合わせをします。
14. 等間隔の妙
- 絣結び
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ピンと張った絣用の糸に尺串 (定規のようなもの) を一定にあて、染めない部分にウバサガラ (原皮の裏側) を巻き、さらにビニール紐で固く結びます。
15. 沖縄の天然の染料で染める
- 染色
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染料は主に、想思樹と琉球藍を使います。染料がにじまないように、乾かし過ぎて、糸が切れないように注意を払います。
16. ウバサガラを外す
- 絣解き (かすりとき)
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染めあがった経緯絣糸は、ビニール紐をはずし、生乾き状態でウバサガラを外します。経絣糸の場合、ずらしてあるものは元に戻しておきます。
17. 糸枠に巻き取る
- 糸繰り (いとくり)
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諸染 (むるずみ) 糸や緯絣糸は、湿気を与え、綛を張り、枠 (糸を繰るための竹製の道具) に巻き取ります。
糸から布へ
18. デザインとの具体化
- 仮筬通し (かりおさどうし)
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デザインにそって整経した地糸に、縞用の諸染 (むるずみ) 糸や経絣糸を組み合わせ、筬 (おさ ※7) に仮に通します。
19. 一定のリズムで巻き取る
- 巻き取り
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仮筬通しをした糸の輪を、丸棒に通し、棒の根本で絣がずれないように結びます。経糸の張り具合を一定にして丁寧に巻き取ります。
20. 綜絖 (フェエー ※8) の輪に糸を通す
- 綜絖通し (フェエードウシ)
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巻き取った糸を仮筬 (おさ) から外し、高機の上に置いて綜絖通しをします。喜如嘉の綜絖通しは一人で行います。
21. 筬に糸を通す
- 筬通し (おさどうし)
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筬 (おさ) に、綜絖通しをした糸を通す工程です。 布抜きムン (筬通し) を使って、一対ずつ順序よく通していきます。
22. 手仕事の集大成
- 織り
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芭蕉は乾燥に弱く、すぐに切れるので、絶えず霧吹きをかけながら織ります。織る時になると、苧績み、撚り掛け、絣結び、巻き取りなどの良し悪しがよくわかります。
23. 仕上げの約12の工程
- 反物の洗濯
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喜如嘉では、織り上がった反物の汚れを落とし、木灰汁で炊き、ユナジ液に浸し (中和させる)、布目を整え……。最後の仕上げをするまでの工程を総称して洗濯と言っています。
- ※7
- 経糸を揃え、緯糸を押し詰めて、織り目を整えるための織り道具。
- ※8
- 緯糸を通すために、経糸を上下に分ける器具。